イケメンは好きだけど近づかないでください!



そう言えばこれ。とネクタイを出す

学校ではカップルがネクタイ交換してつけるのが

ずーっと流行っている

俺はそういうの興味なかったし

なんならついこの間まで

彼女なんて存在がいなかったので

頭からすっぽ抜けていた



「ごめん、俺もそういうのあんの忘れてたんだよね
でももう卒業して使わねーし…欲しいっしょ?」



ニヤニヤとしながら言えば



『く、ください…?お借りしてもいいですか…?』



と前傾姿勢で聞いてくる

全然やるのに、かわいいね~…



「ん、いいよ。お堅い行事の時は確か女子はリボンって
指定だったけどそれ以外は俺の付けてね?
俺がいない代わりにこれで牽制ってことで」



独占欲、だね

まだまだ俺から見たらガキっぽいけど

見ない間にもっと綺麗になっていくだろう

だから、これくらいはいいっしょ



『…別に先輩ほどモテないので大丈夫ですけど』

「それはそれ。俺が心配なの」

『フフッ はーい!』


俺の気持ちを察してくれたのか

微笑み了承してくれる



『学校が始まったらさっそく付けよーっと』



嬉しそうに楽しみ!とニコニコしている

その顔を見て胸がキュッとなった

床に座り混んでいる優の前にしゃがむ

片手で頬を優しく撫でて

耳の後ろに手を入れて親指で頬を触る



『ち、ちかくないですか』

「ん?近づいてんの」



恥ずかしいのか頬が赤く染まっていく

目も少しウルウルしていて

あーやべー、可愛い…



『近づかないでください!!!』



もう少しでキスできそうなところで

思いっきり肩を押され

俺は後ろに尻もちをつく



「…嘘じゃん!?なんで!?
いまいい雰囲気だったよね!?」



いや本当にこれしか言葉が出てこない

俺頑張って3ヶ月は我慢したのに!!!



『まだイケメンに耐性ないんです!!』



自分の顔の良さが仇になるとは思わないじゃん…

ぶつけようのない怒りが込み上げてくる



「テメェ…」



ならこれだったらいいだろうと

腕を引き一緒に倒れこむ

もちろん、優がケガしない様に

優しく抱きとめ強く抱きしめる



『すごい、ドキドキしてますね』

「うっ、るせー。
緊張してんのはお前だけじゃねーから」



これでも"好きな女"となんて

全部が初めてなんだよ

なのにこいつは何もわかってない



『っ、大好きです!!!』



だけど、今は俺の腕の中で

幸せそうにしているこいつが見れれば

それでいいか



あぁ、好きな人と両想いって

こんなにも幸せな気持ちになるんだな



今年はもっと幸せな1年になりますように

どうか優が笑顔で俺のそばにいれますように



「俺も、大好きだわバーカ」


< 89 / 90 >

この作品をシェア

pagetop