人肉病
倒れながらも彼女はそういい切った。
そこには強い意思を感じる。


「人肉なんて嫌。でも……あなたからいい匂いがするのはどうして?」


私を見上げて彼女は首をかしげる。
咄嗟にポケットにかくしてある人肉に意識が向かう。


「な、なんのこと?」

「あなたも感染してるんだよね? なのに、どうして非感染者の匂いがするの?」


鼻がきくのだろう。
くんくんと犬のように私の体をかいで確認してくる。


「なにかの間違いじゃない?」


感づかれるわけにはいかない。
これは、唯一の私の食料なんだから。

私は自分でも気が付かないうちに、ポケットの中の肉片を守るために彼女をおいてトイレから出たのだった。

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