人肉病
人肉を咀嚼しながら、気がつけばボロボロと涙がこぼれ落ちていた。
人間としての尊厳を自ら放棄した。
人としての気持ちを捨ててしまった。

そんな絶望的な気分だ。
だけど美味しさが口に広がっていて、満足感が体を満たしていく。

強い空腹感に抗い続けてきたからその分この一口が極上の贅沢になった。
ゆっくりと肉片を噛み締めて、いつまでもいつまでも飲み込みたくない。

ずっと舌の上で転がしておきたい。


「美味しい……どうして美味しいの……」


膝を抱えて頭をたれて、私は泣きながらずっと人肉を味わっていたのだった。
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