人肉病
加速する
1度美味しいものを味わってしまうと、舌がそれを求め続けてしまう。
校長室へ戻ってきた私はさっきよりも強い空腹感に悩まされていた。
またあの肉を食べたい。
お腹いっぱいに食べたい。

ソファに横になって目をキツク閉じてなにも考えないとするのだけれど、なかなかうまく行かない。
思い出すのは人肉にかぶりついている感染者たちの姿ばかりだ。
麻子に頼めば、あの死体を少しは分けてくれるだろうか。
そんなことを考えて慌てて左右に首を振る。

そんなこと考えちゃダメ。
私はもう絶対に人肉なんて食べないんだから!
おとなしく眠れないのも空腹感のせいだった。

さっきから何度もトイレで水を飲んでいるけれど、全然満たされない。
苦しくて胃がギリギリと押し上げられるような苦痛を感じる。

ソファの上で身じろぎをしたとき、フワリと美味しそうな香りが漂ってきて私は目を開けた。
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