人肉病
「あぁ、そうだよ。なぁ、信じてくれよ」

「打たれた後になにかなかったか? 副反応みたいなものとか」


聞かれて圭太は必死に記憶を巡らせている。


「そう言えば注射を打った翌日は少し熱っぽかったかもしれない。それなのに食欲はあった」

「ウイルスに感染したとき私も最初に熱が出た。直は?」

「俺も同じだ」


直は頷き、深く溜息を吐き出した。
3人共に同じような症状が出ているということは、圭太が打たれたものがワクチンであった可能性が出てくるということだ。


「この後どうするの?」


聞くと直が顔を上げて圭太を見た。


「圭太は先にワクチンを打たれていたのかもしれない。もしそうだとすれば、圭太の父親は今回の件で必ず何かを知っている」

「……俺の父親に接触するつもりか?」

「それが一番手っ取り早いはずだ」


直はそう言いながら圭太の体をまさぐりはじめた。


「なにすんだよ!」


圭太は芋虫のようにその手から逃れようと身を捩る。
< 212 / 245 >

この作品をシェア

pagetop