S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
六章 一生、俺だけのものでいろよ
六章

 柾樹が裕実を心配していていた頃、和葉はすっかりクリスマスカラーに染まりつつある街を歩いていた。

(もう十二月だものね)

 今日、芙蓉は定休日で、和葉は寧々と唄菜に会いに円城寺家へ行くところだ。柾樹は仕事で来られないけれど、結婚式をどうするかなど、女性陣で少し相談しようという話だった。

 オシャレなセレクトショップのショーウィンドウに立つマネキンのファッションがかわいくて、和葉はついつい足を止める。
 花柄のワンピースに白いショートコート、ボリュームのあるカシミアマフラーが素敵だった。今まであまりオシャレには興味がなかったのに、最近は洋服や化粧品が気になるようになった。どうやら柾樹に恋をしたことで、かわいくなりたいという女心が芽生えたようだ。

(マフラー、今年は新調しようかな。柾樹さんとおそろい……とか、どうだろう?)

 同じブランドでそろえて、自分は白で彼は黒。いや、柾樹にはグレーやネイビーのほうが似合うだろうか。

(英国っぽいチェック柄も素敵に着こなしてくれそう!)

 浮かれきっている自覚はあるが、妄想が止まらない。しかし、マネキンの奥にある鏡面に映った自分の顔に和葉は眉をひそめた。

(やっぱり、クマが目立つなぁ)

 朝のメイク時にも思ったことだが、今日は肌のコンディションが絶不調だ。目の下には青っぽいクマがあるし、唇もかさついている。最近、少し寝不足気味だからだろうか。
 寝不足の原因は……両思いになってからのこのひと月、柾樹がちっとも放してくれないせいだ。

 彼の宿直以外の日は、言葉にするのが憚られるほどに甘い夜を過ごしていた。

(愛されてお肌ツルツルは、フィクションなのね。現実には睡眠と栄養が大事なのよね、きっと)

 けれど、心はこれ以上ないくらいに潤っているのでよしとしよう。

 ウキウキした足取りで、和葉は円城寺家を訪ねた。
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