S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
(あえて内緒にしている? 私のことを知られたくないとか……)

 手にしている弁当に視線を落として、和葉は下唇をかんだ。

(お弁当の話をしたとき、柾樹さんあまり乗り気じゃなさそうだった。それも、私の存在を隠したかったから?)

 長く悩んだすえに、和葉は弁当を渡さずに帰ることを決めた。きちんと恋愛して彼に選ばれたのなら、彼に会って「どうして?」と問い詰めることもできるだろうが……。

 和葉はしょせん〝契約妻〟だ。彼が隠しておきたいと言うのなら異を唱える権利もない。

(私、ずいぶんと思いあがっていたな。愛し合える、本当の夫婦になれるような気がしてた)

 その夜、柾樹は帰宅するなり和葉にわびた。

「すまない。今日から弁当の約束だったのに、慌てて受け取らずに出てしまった」
「いいんです。自分で食べたので」

 これは嘘ではない。もったいないので全部自分で食べた。柾樹は落ち込んだ顔で大きく肩を落とす。

「明日からは絶対に忘れない。だから――」

 その台詞を遮って和葉は告げる。

「ごめんなさい。やっぱり朝、意外と大変で……。なので、栄養面は評判のいいサプリとか探しておきますね!」

 重苦しくならないよう、軽い調子で和葉は言った。

(彼に余計な気を使わせる必要はないもの。私は約束どおりに名目だけの妻でいる。きっとそれが柾樹さんの望みで……)
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