S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 本当にそうなのだろうか? 和葉の隣で楽しそうに笑ってくれていた姿は全部まやかしだったのか。
 和葉にはわからない。目の前の彼に聞いてみればいいことだと理解しているのに、声が出なかった。「そうだ」と肯定されてしまうのが怖いのだ。

 和葉は曖昧な笑みで本心をごまかす。

「そう……か。わかった」

 柾樹のほうも、言いかけた言葉をのみ込んだようだった。普段は思ったことをすぐ口に出すふたりだから、こんな空気になったのは初めてで……互いにどうしていいのかわからず途方に暮れた。

 それから数日後。
 ふたりいまだに、かけ違えたボタンを直せずにいた。

 会話がないわけではないけれど、どことなくギクシャクしてしまっている。即席夫婦だから喧嘩も仲直りも、やり方がわからないのだ。

 和葉はダイニングで、濃いめのモーニングコーヒーを飲みながら深いため息を落とした。

(モヤモヤするな。すごく私らしくない気がする……いっそのこと、ぶつかって砕けてみたほうがいいのかも)

 和葉は恋愛初心者で、こういう事態にうまく対処できる大人の女じゃない。だけど、このままは嫌だった。

(私、柾樹さんと笑顔で話をする時間がすごく好きだ。やっぱり、きちんと向き合おう)

 そう決意した瞬間にふと、テーブルの上の小さなカレンダーが視界に入った。

(あれ? もしかして明日って……)
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