春色ドロップス
 家に帰ってくると部屋に飛び込んで寝転がる。 いろんなことが一気に起きたから疲れちゃって。
馬宮はまだまだ休学中。 出てこれるのかなあ?
電話してたこともすっかりばれちゃってるし、あれじゃあ校長先生も噴火しっぱなしだ。 収まらないぞ。
 おかげでお嬢も担任からお説教されたんだよな。 油断し過ぎ。
 「おーーーーーーーい、ご飯だぞーーーーーーー。」 父さんの声が聞こえた。
いつもいつも図面と睨めっこしながら食べてるんだよなあ。 見てるぼくらも何か落ち着かないや。
 「ここがこうなるだろう。 そしたらここがこうなるんだよなあ。」 ブツブツ言いながらビールを飲む。
そして線を引き直してはまた唸り始める。 設計図はまだまだ書き上がらないらしい。
 母さんはテレビを見ながらお茶を飲んでいる。 今夜も平和だなあ。

 部屋に戻るとメールが来ているのを確認した。 (誰だろう?)

 『彩葉ちゃんちの誕生会 楽しみだね。 早く行きたいよ。』

 (折原さんか。 こないだの食事会以来、彩葉に会うのは楽しみらしいもんな。)
メールを書きながらふと思った。 明日辺り折原さんも連れていこうかなって。
 こないだも二人で盛り上がってたもんなあ。 つかさも安心してたみたいだし。

 『明日辺り彩葉の家に寄らない? 彩葉も楽しみにしてたからさ。』

 そう返信してから布団に潜り込む。 見たいテレビも無いし聞きたいラジオも無いから。
ぼんやりと天井を見上げている。 文化祭の日の彩葉を思い出した。
 「あの子さあ、動くことも出来ないんだってね。 だからああやって放送席に居るんだよ。」
知ったかぶりをする母親が彩葉をジロジロと見ながら通り過ぎていく。 それを見付けたつかさが睨み返す。
4年生くらいの男の子が彩葉を指差して笑っていた。 「何を笑ってるんだ?」
勉がものすごい顔で睨み付けると男の子は笑いながら逃げていった。 「親がダメなんだ。 親があれじゃあ学校がダメになる。」
 小学校でも中学校でも同じような事件は起きた。 そのたびに父さんたちも学校へ飛んで行った。
終いには教育委員会もどうしたらいいのか分からなくなったらしい。 「兎にも角にも教頭先生を中心にプロジェクトチームを立ち上げましょう。」とだけ言って逃げてしまった。
 そして今、彩葉は通信制を選んだ。 これで良かったのかなあ?
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