二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 モルディブというのは、香澄でも聞いたことがある観光名所。
 前に、リゾート地に行くという設定のシナリオを書いたこともあったので、その時にネットで検索して写真や動画も見たことがあった香澄にとって、何よりも記憶に残ったのは、綺麗な海の色だった。
 少し淡くて優しい青色は、涼がよくつけているネクタイの色に似ているな、とも考えたりもした。
 けれど、何故そんな国の名前を、今このタイミングで聞かなくてはならないのかと、香澄は戸惑いしかなかった。

「ハワイでもいいかなと思ったけど、あそこ人が多すぎるし」
「え、ええと」
「ロスもそれで言うと、人が多いし……」
「あ、あの、涼先生?一体何の話を」
「ん?香澄と僕のハネムーンの話」
「はっ!?」

 ハネムーンという文字だけならば、香澄これまで何度もタイピングしてきた。
 別名蜜月。
 恋愛系を書く上で、特に結婚をテーマにした作品であればまず読者が求める要素の1つだから。
 もちろん1番大きい要素は結婚式なのは、いわずもがな。

「ちょっ、ちょっと待ちなさい」
「何かな、たっくん」
「あんた、出産後ってことは、香澄の体調も普通じゃないし、何より赤ちゃん!一体どうするのよ!まさか置いていくっていうんじゃ……」
「そのまさかだけど」
「はあ!?」

 またもや、爆弾発言が涼から飛び出した。

「何考えてんのよ!バカじゃないの!?世の中の子育て中の全ての人が大炎上する案件じゃないの!うちの香澄をそんな炎上の燃料に使わないで!」

 拓人はまたもや烈火の如く怒ったが、涼は涼しげな顔でスマホを操作していた。

「ちょっと聞いてるの!?」
「聞いてるよ。だから、協力者と話してもらおうと思って」
「協力者、ですか?」

 今度は香澄が恐る恐る尋ねると、涼は本当に楽しそうな笑みを浮かべながら、こくりと頷いた。
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