二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 SSR。
 何かの略語であることは、察した。
 だが、最初のSがそもそも分からない。
 涼は、とりあえず思いつく限りの可能性を探った。

 生産管理。
 政治資金領収書。
 生前整理。
 正戦論。

(……うん、絶対違う)

 特に正戦論は、正当な原因を持つ戦争だけを合法と認めるという理論。
 香澄には決して似合わない言葉だ。
 
(じゃあ……一体なんなんだ……)

 そんなことを、涼が持ち前の頭脳をフル回転させている間に、いつの間にか香澄がソファからいなくなっていた。

「あ、あれ?香澄?」

 慌てて涼が香澄を探しに2階に上がると、香澄の仕事部屋から声が聞こえた。

「あ、はい、申し訳ございません、すぐに直します」

 香澄の可愛い声に、焦りが入っている。

(誰だ……僕の香澄にそんな声を出させる愚か者は。侮辱罪で訴えるからな)

 心の中で、香澄の通話相手へ威嚇してから、涼は扉をノックしてから中に入った。

「香澄?どうしたの?」
「あ、すみません。急に仕事が入っちゃいまして……」

 ほんの少し涙目なのは気のせいだろうか。
 涼は、香澄をそっと抱き寄せながら、頭を撫でてやった。

「まさか、これから?」
「……明日の朝までに仕上げないといけないみたいで」

 本当であれば、そんな仕事は拒否してしまえ、と涼は言いたかった。
 でも、香澄は自分の仕事にとても厳しいことも、涼は一緒に暮らしている内に知っていった。
 だから、涼はそんな時いつもこれだけを言うようにしていた。

「体、辛いと思ったらすぐに休むんだよ」
「はい。分かりました」

 それから、香澄ともう1度軽い、おやすみを意味するキスをしてから、涼はその足で拓人の家にやってきたのだ。
 1つは、自分と香澄のイチャラブ時間を毎度毎度邪魔をしてくるSSRの意味を聞くために。
 そしてもう1つは、香澄に無茶を強いる電話相手の正体を探り当てるために……。
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