二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する

第2章 二次元と結婚したいってどういうこと?

 その夜、拓人は感じた悪寒を無理矢理無かったことにしながら、迫り来る締め切りに間に合わせるために、机に向かった。
 そして、拓人がヘッドホンをつけ、最近香澄から勧められた、リラクゼーション効果抜群の音楽を体に染み込ませながら、自分史上の名シーンを超高速タイピングで打ち込んでいる早朝5時過ぎのことだった。
 ピンポーンと、近所迷惑なインターホンが鳴り響く。
 もちろん、防音完璧なマンションなので、近所迷惑ということはないが、自分にとっては大迷惑だ。
 ちなみに、最近は美容のことも考え、しっかりと深夜2時には眠る生活に切り替えた。
 たまに、睡眠時間は1時から3時……となることはあるが、まあそれは仕方がない。
 そして、今日は偶然その、仕方がない日であり、拓人の機嫌はすこぶる悪かった。

(また、あいつか……!?)
 こんな時間なんかにやってくる客は1人しか心当たりはない拓人は、その悪魔の足跡のようなインターホンを無かったことにしたかった。
 でも悪魔は、容赦無くインターホン攻撃を拓人の気が狂いかけるまで続ける。

「ああ!もう!!」

 拓人は、せっかくシャワー上がりにオイルで整えたばかりの綺麗な髪をかきむしりながら、インターホンに出た。
 そして数分後……。

「拓人……話があるんだけど」
「だが断る」
「香澄が」
「今度は何!?」

 歩く公害こと芹沢涼、もとい、自分の生物学上の兄を部屋にあげた拓人は、他の客だったらもてなしたコーヒーすらも出さず、水道水をグラスに入れただけのものを投げやりに涼に押し付けた。 

「二次元と結婚したいって言い出したんだけど……」
「だから、断るって言ってんで……え? 何だって?」
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