王子様とお姫様の甘い日常
「あれ?颯どこいくの?家とは逆方向だよね?」

「さぁ、どこだろな」

私の隣でハンドルを握りながら、颯が唇を持ち上げた。

「……なぁ、美弥」

「うん?どしたの」

「いや、マジで美弥がこうして俺の隣に毎日いて、俺が呼んだらすぐに返事してくれんのいいなって……」

私は颯の言葉に顔が熱くなった。

「えと……もうどこにもいかないし。もう颯の……その……奥さんだから……」

私の言葉に今度は颯が頬を染める。

「あのな。急に奥さんとか言うな、照れんだろうが。ったくどこで覚えてくんだか」

「えっと……」

私が返事に困ると、颯が信号待ちで私のほっぺたを優しく摘んだ。

「なぁ、俺のこと好き?」

颯と瞳が合えば、心臓がすぐに苦しくなってギュッとなる。

「俺はいつも言葉に出すけど、美弥は全然言わねぇよな。今すぐ言えよ」

見つめられれば、いつだって颯の意地悪も甘く感じて、私の心は生クリームみたいに、あっという間に溶けちゃいそうだ。

「……ひゃやて……ひゅきだよ」

「は?ばぁか。何言ってるかわかんねー」

颯がケラケラ笑うと私の頬から掌を放し、目の前の大きな門をくぐり抜けていく。

「えっ……颯ここ……」

「美弥は、黙って俺についてこいよ」

私は見たこともないお城みたいな建物に目を丸くしながらも、ドキンドキンと胸が弾むのを感じた。
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