王子様とお姫様の甘い日常
──「安堂様、お待ち致しておりました」

私達が車を降り、立派なエントランスを潜るとすぐにスーツ姿の女性が歩み寄ってくる。

「本日、安堂様を担当させて頂きます、どうぞ宜しくお願い致します。では早速ですがこちらにどうぞ」

ウェディングプランナーとおぼしき女性は、私達をすぐに奥の部屋へと誘導していく。

私は颯の腕をちょんと引っ張った。

「あの、颯……」

「いい式場だろ?一昨年、うちと星川社長で設計から考えて建てた結婚式場でさ、今やコネない限り新規予約は2年待ち。さらにこの間もSNS で人気女優がこの式場で結婚式してさ、今もっとも結婚式をあげたい式場ナンバーワンだからな」

私は豪華な花瓶に生けられた美しい百合の花々や、ダイヤモンドみたいに煌めくシャンデリアに目を奪われると共に、途端に足がすくんでくる。

「美弥さえ良ければここ抑えるけど?」

「え、いや……こんな高級なとこ……それに私、式は……」

颯から私は何度も早く式を挙げようと言われているが、赤ちゃんが安定期に入っていないこと、また何百万とする結婚費用を颯に出してもらうのが申し訳なくて、式はあげなくていいと伝えていた。

「おい、美弥こっち見ろ」

「颯?」

颯は私の顎をぐいっと持ち上げると、切長の瞳を優しく細めた。
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