若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜

結婚式に向けて

仕事が早い柊生は、次の日から早速日取りを決め実家の一橋旅館の1番広い会場を押さえた。

他人には任せられないと、自ら全てを仕切る事を宣言して、仕事の傍ら結婚式に向けていろいろとスケジュールを決めて行く。

花の要望が全て詰まった結婚式は、3月の良き日に行われる事になった。

その間も椋生はすくすくと元気に育ち、花も仕事と育児の毎日に明け暮れながら慌ただしくも幸せな毎日を送った。

そして、あっという間に結婚式まであと1週間となる。

そんな週末のある日、珍しく母が何通もの手紙を持ってマンションにやって来た。

「貴方のお父さんからの手紙よ。
花の気が乗らないなら無視しても良いんだけど、花は大人になってから1度もあの人に会ってないでしょ?

お母さんは3年前に会ってちゃんと話しをして、この先2度と会う事は無いって宣言出来たから、もう不安は無いし恐れる事も無くなったの。」

母の話しでは、3年前に弁護士を通じて和解が成立してから、1か月に一度数万円と共に手紙で謝罪文が届いていると言う。

「あの時、一方的にもう2度と私達に近付かないでって関係を切ってしまったけれど、花にとってはそれで良かったのかって思うところもあって…。
あの人の事を一生許すつもりは無いし、花も許さなくて良いの。
ただ、花の中で少しでもまだ恐怖心があるんだったら、過去と決別する為にも一度会った方が良いんじゃ無いかって…。
柊生君とも話してたんだけどね。」

「そんなに心配してくれてたんだ。ありがとう。」
花は微笑みと共に母にお礼を言う。

「柊生君から花が夜中にうなされてる時が未だにあるって聞いて…
まだ、花の中では過去に出来てないんだなって思ったの。」

自分では無意識だったけど…
今が幸せだからこそ、この幸せがずっとは続かないんじゃないかと、この頃不安になる事が良くある。
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