若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
お腹もいっぱいになって少しまったりとしてしまう。

そのタイミングで、ぐずり始めた椋生に母乳を与えようと、花はブーケを被ぶるから柊生は慌てて、

「車に行った方がいいんじゃないか?
誰が見てるか分からない。」

確かにソファ席になっていて、ひと席ずつ区切られている作りだが、それでも柊生は花の横に座り不自然にメニューを開き、少しでも隠そうと自ら壁になる。

「柊君の動きの方が不自然過ぎて目立っちゃうよ。」
花はそれが可笑しくて、クスッと笑ってしまう。

「大丈夫だよ。授乳してるって誰も分からないからきっと。」

そんな柊生を横目に花は笑いながら、何食わぬ顔で授乳を始める。

「大胆だな…。」

と、柊生はソワソワしながら周りを伺っている。

もしかして柊君は私が緊張しないように、場を和ませてくれてるのかなぁ。と、花は思った。

椋生もお腹がいっぱいになったのか、授乳中にウトウトとし始めたから、柊生にそっと渡して花はホッとひと息吐く。


父との待ち合わせ時間まで後少し、
花は店内にある壁掛け時計をチラッと見て、少し緊張してくる。

小さく深呼吸をして、ちょっとだけ柊生にもたれ掛かり心を落ち着ける。

「大丈夫か?1人で平気か?」
柊生はそんな花を心配してくれる。
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