乙女と森野熊さん

去年の今日、結婚式を控え熊さんとお姉ちゃんの新居への引っ越しを手伝うため私の両親は車を出して、お姉ちゃんをまた自宅へ送っていく途中反対車線から飛び出してきたトラックと正面衝突し炎上、私の両親とお姉ちゃん、トラック運転手は亡くなった。

私の家族はその瞬間、あっけなく消えた。

家で一人留守番していた私の前にいつもの無精ひげ姿で熊さんが突然現れ、初めて見るその緊迫した表情と声に何か良くないことが起きたのだとはわかったが、告げられた内容は想像もしていない事実。

突然の両親の死にどうしていいかわからない私に代わり、熊さんは葬式から全て手配してくれたが、そこで私はまた残酷な現実を突きつけられた。

私は未成年で両親の庇護があるから行動できたのであり、本来私一人で行動できることは法律上では小さな事だけ。

だから誰か大人が私の面倒を見る必要があり、ほとんど面識の無い遠縁の人達は私をどうすべきかで揉めだした。

一人残された葬儀の控え室で、外の廊下から親族達が言い争う声が聞こえる。

うちは無理だ、うちだって無理だ。ならあの子をどこかの施設に入れよう、じゃぁ誰が言い出すの!と。

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