BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~





「えー!ののあ のママ()こなのー?」


希乃愛の口に入ってたクッキーが、ポロリとテーブルの上に落ちた。
そして、大きな目をパチパチとさせ私とお姉ちゃんに交互に視線を向ける。




「希乃愛、こぼしてる」

「うーん」


この子の汚れた口元をウェットティッシュで拭き取るけどキョトンとしたままだ。その瞳にショックは感じられない。
というか、まだ意味が分からない様子だ。


数日後、家族が集まるリビングで母が希乃愛に「ママが2人いる」という告知をする事になったのだ。
子供は大人達が何かを隠そうとると敏感に感じとってしまう。




「希乃愛を育ててくれた香江ママと、産んでくれた佐江ママがいるのよ」

「えー?えー??ママ、いっぱいなの?」


母がゆっくりと優しい口調で語りかていくけど、希乃愛は大きく頭を傾げるだけ。



「そうよ。希乃愛を産んでくれたこっちのママは、すぐ病気になっちゃったの」

「おびょーき?」

「心の病気でね、希乃愛のことは大好きだったんだけどお別れしなくちゃいけなかったのよ」

「………うーん」


なんて、声を詰まらせる希乃愛が私の方にチラリと視線を見せるから。この子が不安にならないよう、目を細めて大きく頷いてみせる。
すると、姉に目を向けて「ののあ のママ?」と、不思議そうに声を出した。



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