この『恋』の言い換えをするならば『瑕疵』(かし)です
ベッドでふたり仰向けに並んだ
白い天井が見えて
なんとなく先輩の肩が当たる
いい雰囲気ではない気がする
ゆっくり先輩の方を向いたら
先輩も私に身体を向けた
目が合う
先輩
今ドキドキしてますか?
先輩
この後はどーしますか?
「坂寄、目閉じて…」
「え…あ…はい…」
先輩に言われて
私はゆっくり目を閉じた
フワッて
先輩に包まれる
優しく
壊れる物を庇うみたいに
私を抱きしめた先輩
やっぱり…
するのかな…
付き合ってるんだし…
するよね
「…先、輩…?」
したいですか?
「ん…?」
なんでいつも
私を待ってるの?
待っててくれるの?
私は
先輩と…キス、したいなかな?
先輩と…
どおなりたいと思ってるのかな?
先輩は…?
「目、開けて…」
え…
先輩の声が聞こえて
ゆっくり目を開けた
夏目先輩が…いる
「寝よっか…」
先輩の少し気が抜けたいい方
私から先輩が離れた
「あ、あの…
私…なんか、ダメでしたか?」
「ダメ…って?」
「あ…あの、自分でもわかるんですけど
私、女の子らしくないですよね!
今度は、ちゃんと可愛いパジャマとか
なんか、もっと先輩の…
先輩がキスしたいと思うような…
先輩が抱きたくて我慢できないような…
えっと、もっと女の子になります!」
何言ってるんだろ、私
「坂寄は、ちゃんと女の子だよ
…
ちゃんと
女の子の匂い
女の子の髪
女の子の肌
女の子の身体
…
可愛くて…
柔らかくて…
優しくて…
華奢で…
淡くて…脆い」
静かな夜
彼氏のアパート
彼氏のベッド
ふたりきり
ワードは揃ってるのに…
は〜あ…
は〜あ…
ふたりであくびをした
緊張感なし
「眠いよね…寝よう」
「はい…」
「ごめん、ベッドひとつしかないから
一緒に寝よう」
付き合ってるのに…変ないい方
「はい…おやすみなさい」
「うん…おやすみ」
おやすみのキスは
もちろんなかった