【アイドル=先生】推しに洗脳されたい。

第1話



新学期開始、初日。
始業式を終え、教室で休み時間を過ごしていた。
新学期といえば、クラス替え、新しい出会い、担任教師替え……。
浮かれたくもなる、楽しいこと尽くしのはずなのに……。
よりにもよって、そんな日に目に入ったスマホのニュース記事は、桜川 英子(サクラガワ ハナコ)を地獄に叩き落とすに等しい内容だった。


「ゲームが……サ終?!?!」


サ終とは、サービス終了の略。
つまり、英子が一番ハマっていたスマホゲームが近々サービス終了してしまうのである。


「折角バイト代をこのゲームに注ぎ込んで、レアアイテムを手に入れまくったのに……っ!!」


英子はスマホを片手に、その場に崩れ落ちた。
そんな彼女を、クラスのみんなが怪訝そうに見ている。
しかし、英子にとって、そんなことどうでもよかった。


「はぁ……もう何もかもどうでもいいや」
「良くないでしょ!!」


座り込む英子のシャツを背後から掴み、無理矢理立ち上がらされた。


「まったく……新学期早々どうしたの?」


呆れた口調で腕を組む彼女は、親友の藤木 彩羽(フジキ アヤハ)だった。
彼女は、一年生の頃に同じクラスになり、いつの間にか親友ポジションになっていた。
どうやら、今年も彩奈と同じクラスらしい。
英子は泣きながら、彩奈に事情を説明した。
しかし、彩奈の態度は冷たかった。


「ふーん、別にいいじゃない」
「どうしてそんなあっさりなの?!課金したお金は返ってこないし、楽しかったゲームは出来ないし、散々だよ!!」


英子が喚き散らすと、”何当たり前のこと言ってるの?”と、彩奈が強気で言い返した。


「お金が返ってこないのなんて、そんなの当たり前でしょ?それに、”ハナコ”はお金を払って、ゲームというサービスを楽しませてもらった立場なのよ?」
「そうだけど……てか、”ハナコ”じゃなくて、”ハナ”!!」


強気の彩奈に、英子は黙って頷くことしか出来なかった。


「それなら、”楽しかったサービスをありがとうっ!!”って、感謝すべきじゃない?」
「うーん、その気持ちも分かるけど、やっぱりサ終って寂しいよ」
「そんなに落ち込む??」
「落ち込むよ!!これから何を生きがいにしたらいいの……?」

未だに落ち込んでいる英子に、彩奈はスマホを取り出し、”これ見て!”と、とある動画を見せた。
それは、男性アイドルグループのライブ映像だった。


「何これ……?」
「アイドルだよ、アイドル!!一緒に”推し活”すればいいんだよ!!」


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