ラーラとピッピの日記帳

3. ピッピを助けて

 ラーラが学校に来てみると先生の姿は何処にも有りません。 「あれ? 先生は?」
「知らないの? 女の子が行方不明になったからって探しに行ったんだよ。」 「それなら知ってるよ。」
ラーラは昨日の出来事をすべて話しました。 「何で君が、、、?」
年輩のローゼンワイヤーさんが身を乗り出して聞いてきました。 「先生が作った絨毯で飛んで行ったって本当かい?」
みんなはその話を聞いてさも面白そうにドッと笑いました。
 「笑い事じゃないですよ。 本当だったら大変なことです。 探しに行かなくては、、、。」 彼はすっと立ち上がりました。
「あのハイドリンゲンの老木に引っかかったのだな?」 「たぶん、、、。」
「でも、あそこまで誰が飛ばしたんだい?」 「ぼくです。」
「え?」 ローゼンワイヤーさんはあまりに驚いて持っていたグラスを落としてしまいました。
「冗談はやめてくださいよ。 あそこまで飛ばすのは私でも大変なんですよ。」 「本当だよ。 本当に飛んじゃったんだ。」
ラーラはただただ項垂れるしかありませんでした。

 その頃、ポンテナール先生は大通りでピッピを探していました。 「この辺りなんだよな、、、。」
先生はひげを撫でながら暗示顔で辺りを見回しています。 「確かに居たよ。」
ピッピが仕事を手伝っているパン屋の主人が奥から出てきました。 「たぶん、あなたが探しておられるのはピッピじゃないかね?」
彼はエプロンを捲りながら先生を見ました。 「そうです。」
「それだったら、あちらの方向に飛んで行ったよ。 男の子も一緒に走って行ったからね。」
主人は飛んで行った方向を指差しました。 「どうもありがとう。」
先生がハンカチを取り出して空中へ放り投げた時、後ろから声が聞こえました。 「先生!」
ラーラとローゼンワイヤーさんです。
「君たちはここへ何をしに来たのですか?」 先生は慌てて聞きました。
「学校でも話題になっているので探しに行こうと思って来たんです。」 「そうですか。」
先生は放り投げたハンカチを見ながら指を縦に振りました。
大きくなった絨毯に先生が乗ろうとした時、ラーラが大きな声で叫びました。
「ピッピの居場所はぼくが知ってます!」 「え? 何ですって?」
ラーラが叫んだものだから先生は絨毯に乗り損ねて引っ繰り返ってしまいました。
「ラーラ君が知っているというのですか?」 「あのハイドリンゲンの檜です。」
「あんな所にまで?」 「飛ばしてみようと思ったら飛んで行っちゃったんです。」
「君が、、、ですか?」 「はい。」
「いやいや、君にはまだまだ無理でしょう。 教えてもいないんだから。」 先生は笑いだしてしまいました。
「ほんとです。 こうやって指を振ったら飛んで行ったんです。」 昨日と同じようにラーラが指を振ると絨毯が飛び始めました。
「ああああああ、君は何をするんですか?」 先生は飛び始めた絨毯を捕まえようと走り出しました。
「先生! モルフの森はこっちですよ!」 森とは違う方向へ走って行く先生にローゼンワイヤーさんが叫びました。
「私は絨毯を捕まえたらすぐに行きますから、あなたたちは先に行っててください!」 先生は叫びながら坂を転がっていきました。

 「ここは何処?」 木の上で目を覚ましたピッピは自分が何処に居るのか分かりませんでした。
「ラーラは、、、?」 見回しても茂った枝しか見えません。
「木の上なのかな?」 乗っていた絨毯は既に小さくなっていて布に戻っています。
お腹も空いたピッピはポケットに入れておいたビスケットを取り出しました。
「ラーラ!」 そして思わず泣き出してしまったのです。
 エプロンで涙を拭きながら辺りを見回します。 青い青い空が何処までも広がっています。
でも、それ以外は何も見えません。

 ピッピとラーラは15歳になると結婚する約束をしています。 ラーラのお父さんとピッピのお母さんが申し合わせていたのです。
ラーラのお父さんは炭焼きの仕事を、ピッピのお母さんは洋服を仕立てる仕事をしています。
ピッピのお父さんは魚を取る仕事をしていたのですが、、、。
 ラーラのお母さんは仕立てを手伝いながら二人を遊ばせていました。
どちらも裕福とは言えませんが、ポンテナール学校へ通うようになったのです。
そしたら前よりも仲良くなって、二人はいつでも一緒なのです。

 そんな二人が居なくなったのですから、お父さんも気が気ではありません。
窯に火が入ったのを確認すると山から下りてきて辺りを探し回っています。
「二人は何処に行ってしまったんだい?」 歩き回ったお父さんは小さな野原に出てきました。
 春になるとお母さんが野イチゴや若草を摘みに来る野原です。
その隅のほうに冷たい泉が湧きだしています。 お父さんは歩き疲れたのか、その泉に足を浸しました。
「お前はあの男の子の父親じゃな?」 誰かがお父さんを呼んだようです。
「あなたは誰ですか?」 「私はハイドリンゲンの老木じゃ。」
お父さんは立っている老人を見詰めました。 「あなたが、、、。」
「そうじゃよ。 お前の息子はもうすぐここを通る。 そこでだ。 お願いが有るんじゃよ。」
「ラーラに?」 「そうじゃ。 老人は森の外れの檜を指差しました。
確かに立派な檜です。 そしてその上に誰かが居るような気がしました。
「あそこにピッピが居るのか。 早くラーラに伝えなければ、、、。」 お父さんが振り向いた時です。
「お父さん!」 ラーラの声が聞こえました。

 ラーラとローゼンワイヤーさんは川を越え、牧場を越えてやっとお父さんの炭焼き小屋までやってきました。
それを見付けたお父さんは厳しい顔で仁王立ちになりました。
「ラーラ! お前はなんてやつだ! 大事なピッピを置いてきぼりにするなんて、、、。」 お父さんはラーラを叱りつけました。
「お父さん、違うんだ。 助け出す方法が分からなくて、、、。」 「言い訳は要らない。 そもそもお前がこんな無茶をしたからいけないんだ。 違うか?」
「お父さん、今はピッピを、、、。」 ローゼンワイヤーさんも必死にお父さんを鎮めようとしていますが、、、。
ラーラはただ立ち尽くすしかありません。 「お前が無茶をしたからこうなったんだ。 違うか?」
「ごめんなさい。」 ラーラはやっと謝りました。
「お前が分かればそれでいい。 早くピッピを助けようじゃないか。」 お父さんは昼食に持ってきた吹かした芋を持って走り出しました。
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