孤独だった君に、僕の全身全霊の愛を…
回想
「━━━━あれ?瑛茉の旦那さん?」

瑛茉の仕事が、週三に減って落ち着いた頃。

真絋が時康と外回りから会社に帰っていると、突然声をかけられた。

「え?
……………あー!真奈さん?ですよね?確か」

「はい!
お仕事ですか?」

「はい」

「あ!コーヒー、飲んでいきません?」

「え?」

「私、そこのショップで働いてて。
今、新商品を色んな人に試飲してもらってるんです!
良かったら、どうぞ!」

真絋と時康は、店に入った。

「━━━━どうぞ!」
「「どうも」」

「━━━━ん、結構旨いな!」
「そうだね!この苦味、後味も良い!」
時康と真絋が順に微笑んだ。

「あ!サンドイッチも、食べません?
私の奢りです!」

「え?いや、これ飲んだら会社に帰らないと」
「俺達、まだ仕事残ってるし!」

「えー、もっと話しましょうよ!」

((この女、うぜぇな…))
真絋と時康は、同じことを思いながら怪訝そうに真奈を見る。

「……………でも、瑛茉も凄いよなぁー」
そんな二人に、真奈が意味深に言った。

「「は?」」

「どうやったら、旦那さんみたいなイケメンを手に入れられるんだろう!」

「は?」

「大学の時もそうだったんですよ?」

「え?」

「あ、聞いてません?
瑛茉、大学の時もイケメンと付き合ってたんですよ!
瑛茉って悲劇のヒロインぶるってゆうか、同情を引くのが上手いのかな?」

「「………」」

昭典(あきのり)も“最初は”ベタ惚れだったもんなぁー」

「「………」」

真絋と時康が黙り込んでしまっても尚、話し続ける。
「まぁ、でも結果的に……
瑛茉を捨てたんですけどね!」

「捨てた?」

「はい。
昭典……あー瑛茉の元彼の名前ですが、その彼が私に相談してきて……
“瑛茉の心が見えない”って。
ほら瑛茉って、あの左目のせいでかなり辛い思いしてたから、昭典に対しても謙遜して卑下して付き合ってたんです。
それが結果的に、昭典の心が離れる原因になって……
相談を受けてるうちに、昭典が私を好きになったんです」

「は?」
「てことは、瑛茉ちゃん…」

「それで、振られたんです!」

「そうだったんだ…」
(だからあの日、あんなに悲しそうだったんだ……)

瑛茉の言っていた“嫌なこと”とは、これかと思う真絋だった。
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