黒木くんが溺愛ヴァンパイアに覚醒してしまったのは、私の告白が原因だったようです。
彼が放つ魅惑的な甘いバニラの香りを吸い込めば、緊張状態に陥った理性は完全に潰えてしまう。
そして気づけば、考えなしに
「……わ私、しょ小学生の時から、ずっと。黒木くんのことが大好きでした…!」
本音をばりばりぶちまけてしまっていた。
ああ、遂に……。
大馬鹿者、辻村胡春(つじむらこはる)の顔は早くも真っ青と化す。
同時に真っ白になった頭の中には、強烈な後悔の荒波だけが押し寄せてきた。
6年間という長い片思いの年月を経て、こんなにもあっけない形で思いを伝えるなんて!!
私は絶望に打ちひしがれ、5秒前にタイムスリップし、自分の顔面をぶん殴りたい気持ちに駆られる。
本当に、ずっとずっと大好きで、何度忘れようとしても忘れられなくて…。
私の涙腺は緩んでしまい、泣くのはグッと堪えた。
あまつさえ、相手はそのお口のぶっきらぼうさから冷酷王子という異名と呼ばれてはいるものの、女子生徒が密かでもなく黄色い歓声を上げる、学校1のモテ男子である。
彼に告白した女子は数多いるだろう。
しかも、彼は告白されても遠く彼方の空を切なげに仰いでは、
「俺、他に好きな人がいるから。」
とばっさり切り捨てるという話だ。
私なんぞ初っ端から、恋愛対象に含まれやしないという絶対的な確信に、心はえぐられる。
彼が返事する刹那への恐怖から、心臓はどくどくと早鐘のように波打つ。
冷や汗をダラダラ流しながら、現実逃避のためぎゅっと目を瞑る。