黒木くんが溺愛ヴァンパイアに覚醒してしまったのは、私の告白が原因だったようです。
都合の良い女扱い…? (辻村胡春SIDE)
 
 私が蒼夜くんの番になったあの日から、もう一週間が経った金曜日。

 そして私は、またしても黒木くんと図書室にふたりきり、、という状況に置かれている。

 (あぁ、お母さんごめんなさい。自習だなんて嘘…。本当にごめんなさい…!)

と悶々としている途中にも、黒木くんは私の制服の真紅のリボンと汗ばんだ白シャツの第2ボタンまでをぷちぷちっと外していく。

 ばくばくと破裂しそうな心臓と硬直しきった体の持ち主である私にはなす術もない。

 何にせよ、一体どうしてこんなことになってしまったのか謎は深まるばかりである。

 恐れ多くも蒼夜くんに想いを告げるという大失態を犯した先週。
 ベッドで何度、反省会を繰り返したか分からぬ休日。
 それを乗り越え、やっと訪れた月曜日の放課後を私は回想してみることにした。


 私(属:帰宅部)は、名前に負けじと蒼白な表情を含んだ蒼夜くんから、本日のような手口を使って図書室に呼び出される。

 何事かと思いつつ、待ち合わせ場所に到着すれば

「もう我慢できない…。俺に血を分けてくれないか!」

と真っ先にきゅるんと瞳を潤め、懇願してきた蒼夜くん!

 もちろん私は、こんなにも可愛らしいおねだりをしてくるSSR級の蒼夜くんを断れるはずもない。

 それから1週間の間に放課後に吸血行為のお手伝いをするのは、もはや日々のルーティン化されてしまったのであった。

 まさに、私がどれほど蒼夜くんに弱いかを思い知らされる出来事だ。

 (あぁ、でもやっぱりお母さんには言えない……。)

 熱っぽいとろけた空気感が漂う二人きりの密室。
 しかも、本日は書架の整理という業務がある金曜日だ。
 そんな中、クラスメイトの男子が、自分の首筋の血液をジュルジュルッと音を立て、吸っているという事実。

 (お母さんには、絶対の…絶対に、、言えない……!!)


 しかし、くらくらとめまいのするような危険な甘いバニラの香りを纏った好きな人。
 いけないことだと頭では分かっていても、彼に身の全てを委ねたくなってしまう。


 れろれろと耳の中を舐め回すのはそうやくん……。
 ぺろぺろ首筋に噛みつくざらざらとした舌からは唾液がこぼれ落ちる。

「ひゃあ。」

「耳弱いんだ、胡春かわい。」

 言葉で実況中継するの、やめて……。
 それに、吸血と関係ないことしてない…!?
 
 疑問に思い、質問しようとすると

「いくら、図書室に人が少なくいと言ってももこんないやらしい声をダダ漏れにしてたら、先生に見つかっちゃうかもな。」

「ぁん、ぃやっ……!」

 果たして人生で、これほどまで羞恥心を抱いたことがあっただろうか。

 ぼっと浮かび上がる頬の毛。
 その事実にますます、全身は熱を帯びていく。

「キスマークつけてやる。これでお前を狙ういやらしい男どもに牽制できるな。」

 ワタシを狙ういやらしい男ども、とは…?

 そんな人いるはずなんてないのに、そんなに真剣な顔をされるとさすがの私も勘違いしそうになってしまう。


 彼と私がもしかしたら、両思い?だなんて。


 でも私は、彼に「好き」とは言われていない。
 それに、蒼夜くんには他に想い人がいるのだった。

 やっぱり私は、血液をくれる都合の良い存在と認識されているだけかもしれない。
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