聖女さまがいっぱい!(聖女ショートショート集)
 参ったなあ、キラッキラの目で見てくるよ。追放されたからって幸せになれるとは限らないじゃん。「退職したい」ならまだわかるけど、「追放して」ってさあ。

 一部の良い追放者を見て勘違いしてないか、この子。普通の追放者は白い目で見られるんだよ。成功例だけ見て自分も、ってさあ。夢を見るのはいいんだけど……。

 大聖女になりたいならわかるよ。応援もできるよ。でも追放ってさあ。

「追放されたあとのあてはあるの?」

「なんとかなります!」

 だからさ、その無駄に前向きなの、なんなん? 

 王子様を紹介しろって言われたほうがまだわかるよ。

「でも君、何も悪いことしてないじゃん」

「そこはほら、神殿側ででっちあげてもらって」

「できるわけないじゃん! こっちが悪者になるじゃんか!」

「ケチ」

 ケチとかそういう問題か!?

 でもなあ、聖女のご機嫌を損ねて滅ぼされた国があるって聞いたことあるしなあ。

「仮追放ってことでどうかな?」

「仮かあ」

 しばし悩む聖女。沈黙が降りる。

 ああ、気まずい。仮追放ってなんだよ、聞いたことないよ。勝手に何か作っちゃったよ。

 仮追放に聖女が同意したとして、上司にどうやて報告しよう。休職願いってことでいいかな。

「ほら、仮にしとけばさ、あとで復職もしやすいし」

「いえ、幸せになる予定なんで復職しないです」

 だからとうしてそんなに確信してるの!?

「じゃあ、自己都合退職してもらって、追放されたって噂を流すってことでどうかな」

「えー?」

 不満そうだ。いやこれが一番いいと思うけど。そうして。ね、ね。

 心の声が聞こえたのか。

「じゃ、それで」

 聖女が答えた。

 彼はさっそく手続きを行った。

 聖女は喜んで翌日には去っていった。




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