やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 何だと!
 その言いぐさに、あんたは何様か、と言葉をぶつけたかったが我慢した。
 王子に文句をつけた下人、と有名になりたくない。

 別に私のことが知りたくて名前を聞いたんじゃない。
『名前を聞いてやったのだから、これ以上俺の周りをうろつくな』と脅された気がした。
 教室を出て行ったシドニーの背中を睨むしか出来なかった。



 それ以外なら、この1週間は比較的に平和だった。
 3年振りとは言え、授業内容も覚えていることも多く、当たり前だけれど先生の顔触れも変わっていないので、進め方や板書の癖も分かっていて、本当に楽をさせて貰えている。
 ただ、プライベートな部分では、私を取り巻く環境は、前回とは変わった。



 前回の私は、周囲と仲良くしたいのに、一目で好きになったシドニーに関してはそうとはならずに、人目を気にすることなく、彼にぐいぐい近付いたので、あからさまに文句をつけに来る女生徒が多かった。


 今回は、あの語学教室での一件が瞬く間に広まって。
『シドニー・ハイパーから名前を聞かれたのに、大した名前じゃありませんと教えなかった1年女子』と知られるようになって。


 それ以外に何の接触もないのに、面と向かって文句を言われるのではなくて、聞こえないように(いや、絶対に聞こえるようにだ)、陰口を言われるようになった。
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