やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

11

 これまでにも大の男が、子供と小娘を大声で悪し様に怒鳴り付けていたから、何人かの人が足を止めてこちらを見ていた。
 そこに私が痛い痛いと大袈裟に声をあげたのでその人数は増えてきていた。

 しかし誰も助けに入ってくれないのは、夜遅い時間にこうなった状況が読めなからだ。
 これが昼間の出来事なら、もう既に私とパピーは周りに助けられていたと思う。

 だけど、ここは夜の繁華街で。
 まともな子供や女性なら、こんな時間にこんな場所で、勤務中のおじさんから怒鳴られている訳が無い、と思われているのだろう。
 事情も分からずに私達を助けようとするのに、躊躇いがあるのだ。


 ようやくおじさんも周囲の様子に気付いたのか、自分は困っているのだとアピールするように、大きなため息をついた。
 そして、取り囲む男性達に説明するように、話し出した。


「このガキはな、俺の店に忍び込んでパンを盗んだ泥棒なんだぜ。
 これから警察に付き出してやるんだから、関係ないならあんたは引っ込んでろよ」
< 26 / 444 >

この作品をシェア

pagetop