やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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 10月の残り2回の、シーズンズでの仕事。
 退勤時間が近付くと、私は敢えて直ぐには終わりそうもない仕事を始めて、納品受け取りを頼まれないように動いた。
 11月からは店外での行列整理係に配置転換されるし、そうなれば納品の受け取りも無くなると思われるので、後2回凌げれば。


 大丈夫だと言われても、サイモンの顔を見るのが怖かった。
 彼からの手紙には、今まで無礼な態度を取って申し訳なかった、と綴られていたが、前回の記憶を辿ると。
 私達は年末前には、先輩後輩としてよく話すようになったのを思い出した。

 ここまでの経過は全く違っているのに、彼と私が近付く時期は変わっていなくて、余程積極的に行動しない限り、運命で決まった人との縁と言うものは簡単には切れないのだ、と実感する。


 そんなことを思いながら。
 10月の最後の勤務が後10分となっていて。
 私が焼き場から、焼きたてのカップケーキを運んでいるところに、ベイカーさんが現れた。

 文字で表すとするなら、私はぎくり、ベイカーさんはにやり。
 その微笑みにものすごく嫌な予感がして、慌てて説明する。

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