やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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「早い話が、サイモンはまだセドリックから自分の役割を教えられていない。
 単に、死んだ息子に似ているからと遠縁の男の家に引き取られて、その名前で生きていかなくてはならなくなって。
 居心地が悪いから、家を出ているようだ」

「……初対面のじぃじにそこまで、ぺらぺら話したんですか?」


 夕食後に祖父に電話をした。
 もちろん着払いで。
 どんな非常事態でも、私の身に染み付いている母の教えだ。


「……あー、あいつから聞いた話に若干補完した。
 まあ、聞いたのは両親が順番に死んで、地元の親戚は誰も引き取ってくれなくて。
 妹と入れられた孤児院が酷くて、現れた遠縁だと名乗る男に妹も一緒でいいからと言われて、その話に飛び付いた。
 でも、なんとなく気持ちが悪いから家を出た、だけだ」


 それだけでも、人見知りのシドニーがそこまで話したの!と驚くけれど。
 これは判明した調査結果で、かなり補完しているわね。


「さすがに本名は名乗らなかったし、どこの出身かも言わなかったがな。
 だが、血の繋がりのない家に引き取られて、どうにも信用出来なくて、妹を地元に返した、と言っていた」
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