やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 以前から怪しげな噂をされていたらしいが、11月第1週目の土曜日の夜、学生寮に彼は戻ってこなかった。
 部屋の荷物はそのままなので、家出ではなく。
 女性絡みで何か危ないことに巻き込まれたのでは? という噂が学院を駆け巡っていた。


 心配よりも面白がっている風潮なのは、普段の王子の態度が悪いからだ。
 王子という呼び名は、見た目の良さと尊大な態度から来ていたのだろう。
 自業自得の、用心し過ぎた結果だ。

 監視役のゲインは自宅通学組なので、シドニーの週末のご乱行はご存じなく。
 よって侯爵も知らなくて、学校からの連絡で取りあえず、休学届を出して、残された荷物を引き取っていったそうだ。



 自分が消えた後の学院の話を聞くのが、サイモンのお気に入りだ。
 女性絡みのトラブル、で爆笑していた。
 そうだろう、彼が会いに行っていた年上の未亡人と言うのは妹で。
 容姿を利用した仕事と言うのは、配達の力仕事だった。


 ゲインが『あの男』からの回し者だと気付いていたらしい。
 仲良くするように、と中等部に入学して直ぐに紹介されて、
『こんな奴とは、絶対に友達にはならない』と思っていたそうだ。
 それを、5年以上の付き合いなのに、決してファーストネームで呼ばない、というささやかな抵抗で表していた。
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