やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 フレディは一体いつまで秘密にしておくのか。
 逃げられなくなってからそれを知った時のメリッサが、従兄だと黙っていた私をどう思うのか。
 考え始めたら、背中を冷たい汗が流れる。

 それでも確かに、ふたりは幸せそうで。
 私は、繰り返し言った。


「おめでとう、と言えたのは言えたんですけれど」

「あぁ……なる程ね」


 フィリップスさんはきっと、私が司法試験について悩んでいるのだろう、と経験した先輩としてアドバイスのひとつでもしてくださるつもりだったのに。

 私の口から出たのは、己の器の小ささを物語る大切なはずの友人達の愛の成就への妬みの愚痴なので、いささかもて余している様に見えた。


 だから続けて言えなかった。
 19のリアンが16のクララを、自作のミューズにしていることは。

 リアンは芸術学院の卒業制作で、クララをモデルにした作品を提出して。
 卒業後も学院内で飾られていたそれを、昨日返却されてきたからと見せて貰ったのだが、その淡く優しい色合いがリアンの心情を表していて羨ましくて。
 ……また嫉妬した。

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