やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「母の実家が、貴族街の外れにあります。
 祖父がそこで商売をしていて。
 私がこんな時間にトラブルを起こしたと知られたら、同居を余儀なくされます。
 ……病院に行かないで私が面倒を見て、パピーは元気になりますか?」

「その、お祖父様のところには連れて行きたくない、ということですか?」

「……」

「分かりました。
 これをお渡しします、僕の名刺です」

 彼は器用に、眠っているパピーを抱いたまま、ジャケットの内ポケットから名刺を1枚取り出した。


──オーウェン・フィリップス


 手触りの良い上質の紙を使った名刺には、ただそれだけ。


「貴女の共犯者の名前です」


 元々がそういう性格なのか、それとも冗談でなのか。
 フィリップスさんは何かヒーロー的な格好いい台詞を言いたかったのだと思う。

 
 共犯者って?
 私は犯罪は犯していませんけど?
 と言うのは我慢した。
< 43 / 444 >

この作品をシェア

pagetop