LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
「ず、ずるいです」

 思わず口にしていた。

「何が?」

 挑発するように、瑶煌が聞き返す。

「だって、その……」

 なんて言っていいかわからない。

 瑶煌はフッと笑った。

「実際にこんな客がいたら、断っていいからね。困ったら俺を呼んで」

「……はい」

 練習になってない、とは思ったものの、藍にはそれ以上何も言えなかった。

 重ねられた手の、少しずれたハートが藍の目に映る。それがなぜだか切ない。

「続ける?」

 ささやくように言われ、急いで藍は首を振った。これ以上は心臓が爆発してしまう。

「じゃあ、終わりにしよう。駅まで送っていく」

「い、い、いいです、一人で帰れます!」

「無理しないで」

 店長と二人のほうが無理です!

 心の叫びは通じず、藍は瑶煌に駅まで送られた。

 心臓が限界を突破した気がした。

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