ＬＥ ＣＩＥＬ ＢＲＩＬＬＡＮＴ 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

　店内を見るが、瑠璃しかいない。険しい顔をしてこちらを見ているだけで、瑠璃は動かない。

「あんたのせいで直哉がおかしくなったのよ！　直哉を返して！」

「えっ。日長さんは外出中で……」

　ビジネスマナーなどふっとんで藍は答える。

「私の直哉よ！　直哉が私をフるなんてありえない！」

　そのまま床に座り込み、女性は号泣する。

　要するに、日長さんに振られてのりこんできた、と。

　パニックになる頭で、なんとか状況を飲み込もうとする。

　で、なぜそれが私のせいに？

　藍はひきつった顔で女性を見下ろす。

　こういうとき、どうしたら？

　店長が工房にいたはず。

　工房は離れているし締め切っていると店内の音は聞こえない。店長はこの状況に気づいていない。

　瑠璃が動いてくれないので店長を呼びにいこうとして踵を返したとき。

「逃がさないわよ！」

　後ろからタックルされて、前のめりに倒れ込んだ。