LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 黒ずくめの四人の男がいた。

 一人は瑶煌と掴みあっている。直哉もなんとか黒ずくめを止めようとしているが、バールのようなものを振り回され、近付くことができないでいる。

 残りの二人はバットでショーケースを割ったり指輪やネックレスなどを鞄に入れたりしている。

「藍! 瑠璃! 逃げろ! 警察に通報!」

 二人に向かって瑶煌が叫ぶ。

 瑠璃は腰を抜かしたように座り込んでいた。

「桜内さん、立って」

 藍は瑠璃に手を貸して立たせた。事務所のほうへ連れて行くときに、視界の隅に応接セットの上に置かれたデザイン画とケースが目に入った。

 あれは、お客様の!

 ――母からもらったのよ。

 うれしそうに語る客の声。

「桜内さん、通報お願いします」

 瑠璃ががくがくとうなずいた。震えながらスマホを取り出す。

 藍はカメオを瑠璃に渡し、すぐに店内へと引き返す。

 早く早く、犯人に見つかる前に!

 だが、犯人は藍が応接セットに向かうのを、見とがめる。

「動くな!」

 犯人が怒鳴る。だが藍は止まらない。

 ケースとデザイン画を手にしたとき、うしろから犯人にバットで殴られる。右肩に激痛が走る。

 思わずしゃがみ込むと、二度、三度と背中への殴打が続いた。藍はケースとデザインを抱え込んで守る。

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