LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

63 もしかして

 時間が過ぎるのがやけに遅く感じられた。

 スマホを握りしめ、連絡があればすぐに出られるようにする。が、スマホは沈黙を続けている。

 店は誰が片付けたのか、きれいになっていた。業者を入れたのだろうか。

 ドアのガラスは割れたままだった。段ボールで簡易的に(ふさ)いである。シャッターが閉まっているから、それでも大丈夫なのかもしれない。

 ショーケースはすべてなくなり、殺風景な室内の片隅に、ポツンと応接セットだけが残っている。

 藍はそこに座って焦れる自分を抑えながら座っていた。

 だが、まったく落ち着かない。

 本でも借りて見てようと思って事務所に行ったが、本はまったく残ってなかった。瑶煌がかたづけたのだろう。

 もしあったとしても読んでなどいられなかっただろう、と藍は思い直す。

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