LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 入社当時は茅野さんだった。

 順に記憶を追って行く。

 救急車で病院に行ったときはもう、藍、と名前呼びだった気がする。

 病院、とここでまた藍は何かが引っ掛かる。

 なんかすごいこと言われなかったっけ。

 思い出すのが怖い。

 だが、記憶が次々と蘇る。

 強盗にあって、気がついたら救急車の中だった。

 翌朝、目が覚めたら店長がいた。

『君が一番大切なのに』

 そう、言われた。

「本当に?」

 思わずつぶやく。

 あのときは頭がぼうっとしていた。店長が言ったことを都合の良いように改竄(かいざん)して記憶しているかもしれない。脳はけっこういい加減な記憶の仕方をすると聞いたことがある。

 先ほどとは別の理由で落ち着かない。

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