LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 瑶煌は続ける。

「あのとき直哉が言っていたこと、その通りだと思う。俺はみんなが許してくれているのをいいことに工房にこもり、何も見ていなかった。誰のことも見ていなかった。お前のことも、お前の苦しみも。気づくきっかけはあったのに、信じると言って、放置した。それはもはや妄信だ。すまなかった」

 あるいは、勇気がなかった。自分が信じたもの事実が違うという現実を受け入れる勇気。

「いい人ぶるなよ! 本当は俺のこと恨んでるんだろ!? 俺がきっかけで強盗が入ったんだぞ!」

「それについては怒っている。みんなに迷惑をかけたから」

「やっぱりいい子ちゃんじゃねえかよ。偽善者。きれいごとばっかり」

 (あざける)るように言う。が、瑶煌はその挑発にはのらない。

 ふん、と鼻で笑って直哉は突然駆け出した。

 慌てて瑶煌はそれを追う。




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