LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

17 酔っ払い

 平日夜の駅前は、電車が到着するたびに駅から人が吐き出される。喧騒(けんそう)はその波とともにやって来て、通り過ぎて行った。

 藍の足元はおぼつかなくて、本人はまっすぐ歩いているつもりなのに、なぜかフラフラしてしまう。

「どれだけ飲んだらそうなるのよ」

 瑠璃(るり)は眉根を寄せた。

「お酒に弱いんじゃないかな。意外に飲んでないよ、ほら」

 レシートを見せて直哉が言う。

「アルコール入りと間違えて飲むとか、そんなベタな間違いする? いい年した大人が。お酒覚えたての人じゃないんだから」

「瑠璃、聞こえるから」

「どうせ明日には覚えてないわよ」

 そう言われた藍は、急に、ぐるん! と体の向きを変えて瑠璃に向きなおる。

「桜内瑠璃さん!」

 大きな声で名前を呼ばれて瑠璃は体をビクッとさせた。反射的に自分を庇うように腕で自分を抱える。

 周囲の会社帰りの人が、一瞬彼女らを注目する。が、なんだ酔っ払いか、とすぐに気付いて立ち去っていく。

「良くないと思います! きちんと仕事を教えてください!」

 手を挙げて、藍は叫んだ。呂律が急に直っている。

「何言うのよ突然」

「瑠璃さんがすごいのはわかりました。私が嫌いでもいいです、仕事教えてください!」

 それを見て直哉が大笑いする。瑶煌(たまき)は目を見開いて呆然としていた。

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