LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

24 スイートローズケーキ

 どうしてこうなった。

 瑶煌とテーブルをはさんで対面しながら、藍は内心の焦りが表に出ないように気を付けていた。

 あのあと、瑶煌に食事に行こうと誘われた。

 そう言えばもうそんな時間か。と藍は空を見た。

 暗い空が小さく外灯にふちどられている。ビルにも灯りがともり、帰宅を急ぐ人とこれから寄り道していこうとする人たちが道に溢れている。

「では、私がおごります。スーツのお礼です」

 口からつるっと出てしまった。そう答えた自分に動揺(どうよう)した。

 じゃあ、と連れて行かれたのは高そうなイタリアンの店だった。落ち着いた店内には数組の客。静かな音楽にささやくような会話の声。

 私のバカ、と自分を(ののし)るがもう遅い。

 スーツ代より高くつくのでは。財布にどれだけ入ってたっけ。

 藍は現金主義だからカードも持ってないしスマホ決済もやってない。

 カード作って置けばよかった。あるいはスマホ決済――今からでも登録できる? でもどうやって――。

「何にする?」

 リラックスした様子で聞いてくる瑶煌。

「えっと……」

 悩んでいる藍を見て、瑶煌は微笑した。

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