デキるイケメン 二人の求愛   失恋直後のインテリアコーディネーターが選ぶのは!?
‘最期を悲痛に暮れて迎えるのではなく、楽しい記憶や経験、親しい人たちを思い出しながら穏やかに過ごして欲しい場所’

これだ。

「夕月、ありがとう」
「テキストのどこかに書いてあったような言葉かもしれません」
「いい。これまでに開いたどの参考資料の言葉より、一番僕の理解に役立った。助かったよ、夕月」

そう言いながら僕はスマホにその言葉をメモした。

「夕月が言おうとした‘形にするのは難しい’それをするのが僕の仕事」
「カッコいい…言ってみたい…どこかの現場で言えるように私もメモメモ…」
「夕月のキメ台詞にすればいいんじゃないか?」
「うーん…私、形にしますんで…みたいな?」
「…イマイチ…か?」
「ですよね」
「コピーライター紹介しようか?」
「いらない。私、役者じゃないので、人に作ってもらった言葉に魂を乗せられない!!…今の決まった?」
「めちゃくちゃカッコよく決まった決まった、ははっ…夕月はやっぱり僕の最高のヒーラーだ。仕事の行き詰まりもホスピス患者と話した息詰まりも一気に吹き飛んだ」
「…よし…漢字変換成功してます。行き詰まりと息詰まり…もしかして湊さん、ダジャレのおつもりでした?」
「ははっ、いや」
「良かったぁ、ダジャレを無視して真面目に変換してしまったと焦った…」
「焦らなくても」
「玲子さんと星本さんは、私が気づかないと‘まだまだだな’って二人で鼻を鳴らすんです」
「オヤジ臭いダジャレ、わかるかって言ってやれ」
「…面と向かって言えます?あの年齢の二人に…」
「やめておいた方がいいな」
「返り討ちに合うでしょ?」
「間違いない。二人とも元気すぎる…夕月の大切な先輩で仲間だ」
「はいっ」

弾んだ声で頷く夕月は今日のアクシデントをすっかり一人で乗り越えたんだな。乗り越えた先に僕がいる…ゆっくりと…でも深く深くまでおいで、夕月。
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