育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
プツリと通話が途切れて10分も経たないうちに、けたたましく救急車のサイレンが遠方から聞こえてくる。
紺色のスクラブの上から白衣を羽織ると、救急車受入れ口へと向かった。

滑り込むように救急車が到着し、先に救急隊が降りてくる。
救急隊の2人が後ろのドアを開けストレッチャーを降ろしている間に、もう1人の救急隊が引き継ぎ票を俺に手渡してくれた。

それを受け取り申し送りをしてもらいながらストレッチャーに目を向けると、小さな身体で一生懸命痛みに耐えている女児が目に入る。


「意識は?」

「意識清明、バイタル異常なしです」

「わかった。すぐレントゲン撮影するから、中へ運んで」

「了解しました」


ストレッチャーに乗せられた女児が院内へ入って行ったあと、母親と思われる女性がナースに付き添われながら救急車から降りて来る。見ると、左膝に結構な広範囲での挫創があるにも関わらず、心配そうに女児の後を追いかけて行った。

きっと、娘を守ることに必死で、痛みに気が付いていない。
こうして救急外来で交通事故の受け入れを何度もしたことがあるけれど、子どもを守ることに必死で、自分の傷に気が付かない親がいることはよくあることだった。

今回も、きっとそれに違いない。女児の診察が終わり次第、母親の処置もしなければいけないな。
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