育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました

強がるのをやめるとき

妃織が退院してから1週間が過ぎようとしていた。
週1回、リハビリ通院兼状態確認のために通院はしているけれど、私もやっと職場に復帰。

店長には『無理はしなくてもいいよ』と言われたけれど、長い期間休んでいた分を取り戻さなければならない。休んでいた間は同期の梨花(りか)がたくさんシフトを変わってくれて、本当に助かった。


私が勤める『アルカンシェル』というケーキ屋は、半年ほど前に新規オープンしたばかり。いろいろな種類のケーキや焼き菓子などが毎日たくさん並んでいて、イートインスペースも設置されている。

月替わりで展開されている今月のケーキは『桜桃と洋ナシのレアチーズケーキ』らしく、ショーケースの1番上に陳列されていて、売れ行きも好調。

先月は『シャインマスカットと巨峰のタルト』だったらしく、食べ損ねてしまったから少し残念だ。


「お疲れ。はい、これ」


休憩時間、スタッフルームで声を掛けてくれたのは、梨花だ。

彼女が手にしているのは、今月のケーキ。妃織の入院生活に忙しくて先月のタルトを食べられなかったと嘆いていた私に、賄いとして持って来てくれたようだ。


「嬉しい。ありがとう」


お礼を言ってからレアチーズケーキにフォークを差して、口に運ぶ。口の中で桜桃と洋ナシの甘みが交じり合って、絶妙なハーモニーを生み出している。
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