束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】

7. あふれる想い

 イギリスと日本。それは思ったよりも遠い距離だった。

 時差があるせいで、思ったように彩子との時間が取れない。毎日通話をしてみても、会えない淋しさは消えてなくならなかった。彩子が変わらずにいてくれることだけが救いだった。


 そうして淋しい想いを抱えながらも時は過ぎていき、帰国まで残り三ヶ月というころに、大隆から直接話がしたいと連絡がきた。聞いてみれば、それは結婚式に招待したいという話だった。大隆は洋輔の気持ちを知っていたから気をつかってくれたのだろう。


『嫌なら断ってもいいよ。でも、できれば出てくれると嬉しい』
『うん、出席させてもらうよ。それに小谷のことならもういいんだよ』
『うん……』

 洋輔は本当にもう大丈夫なのだが、大隆には伝わってなさそうだ。

『そうじゃなくてさ……俺、今、他に好きな人がいる』
『え?』
『だから気にしなくて大丈夫だよ』
『そう、なのか……』
『うん』
『……もしかして、それって……』

 どうやら勘づいているらしい。

『ははっ。やっぱりわかるか。たぶんあってる』
『折戸さん?』
『うん』
『そっか。折戸さんには?』

 想いを伝えたのかと聞きたいのだろう。何て言おうか迷ったが、そのままを伝えることにした。

『……付きあってる……でも好きとは言ってない』
『ん? なんで?』
『うん……まあいろいろあって……』
『言ったら喜んでくれるんじゃない?』

 そうであれば嬉しいが、正直彩子の反応はわからない。

『うーん……どうかな……』
『何か事情があるんだろうけど、洋輔はもっと自分の感情を素直に出したほうがいいと思う。伝えてみたら?』
『考えとく』
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