束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「松藤くん、彩子に好きって言ったでしょ。彩子はそれ口先だけの言葉だって思ってるよ?」
「違う!」
「嘘をつかれたと思って苦しんでるんだよ。彩子が体調崩したのもそのせい。あの子眠れなくなったんだよ……」
「そんなっ……」

 そこまで言われれば嫌でもわかる。

 自分はその想いがずっと欲しかった。でも、こんな形を望んでいたわけじゃない。

 彩子を苦しめていたかと思うと胸が張り裂けそうに痛んだ。

「もうわかったでしょ。取り繕わないで、早く全部伝えてやって」
「わかった」
「ひどい言い方してごめんね」
「いや。言ってくれてよかった。ありがとう、坂本さん」


 すぐにでも彩子にすべてを話そうと思った。自分の想いすべてを伝えようと。


 だが、今日に限って、人に捉まってしまい、会社を出たのは夜の十時を過ぎたころだった。

 今から会いにいってもいいが、体調のよくない彩子のところに無理に押しかけることはしたくなくて、結局その日は諦めた。
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