束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 せっかく時間をかけて修復したというのに、また心に大きな傷ができてしまった。

 けれどそれでよかったのかもしれないとも思う。洋輔の優しさに触れ続ければ、いつか自分こそが本物だと思い違いをするときがくるかもしれない。そうなる前に釘を刺されたのだ。心は痛くてしかたないが、洋輔の隣にいるためにはきっと必要なことだ。彼の痛みだってわかってあげられる。


 心の傷は見えないように覆い隠してしまえばいい。自分さえ知っていればいいのだ。洋輔が知る必要はない。そうすればきっとこれからも幸せな時間を共有することだってできるはずだ。



 取り繕えなかった彩子の表情に恵美は気づいたようだが、何でもないと言って踏み込ませなかった。


 彩子は会社に戻るころにはすっかり笑顔の仮面をかぶっていた。
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