私 ホームヘルパーです。
 旦那様となんとか平和にお茶を飲み、夕食の支度を、、、。 「手伝うよ。」
(何ですって? 手伝う? 嫌な予感しかしないわ。) でも突っぱねるわけにもいかないので手伝ってもらうことにしました。
「俺さあ、今月で辞めようかと思ってるんだ。」 「冗談でしょ? あなたが居ないと会社はどうなるのよ?」
「他にもいいやつは居るから大丈夫だよ。」 (こっちが困るのよ 働いてもらわないと、、、。)
「次の仕事も見付けてあるんだ。 来月からそっちに行こうと思ってる。」 「いきなりねえ。」
「給料もそっちのほうがいいんだよ。」 (だからって夜は激しくしないでね。 お願いだから。)
でもまあ、いきなりの話なんで今日の所は保留しておきましょう。 今までにも聞いたこと有るからね。
 夕食が出来上がりました。 今夜は家族の団欒です。
珍しいよねえ、みんなが揃うなんて、、、。 息子君は私をジロジロと見てますよ。
旦那様はそんなのお構いなしねえ。 良かったわ。
 テレビは付いているんです。 誰も見ていないけど。
みんな黙々と食べてます。 緊張するじゃない 話してよ。
「はいはい。 ご注目。」 敢えて元気に声を掛けますが、、、。
「何に注目するの?」って言いたそうな目でみんなが私を見てます。 やっちゃったかな?
 ちぐはぐな団欒が終わってホッとしていると、、、。 ソファーに座っている私の隣に息子君が座ってきました。
「今夜はダメだからね。」 小声で耳打ちをします。
だって旦那様が居るんだもん。 いつ攻めてくるか分からないもんねえ。
でも息子君はお構いなしに雑誌を読んでます。 それだけかーーーーい?
兎にも角にも油断ならん家族なんですわ 私の家族って。 でも夜10時。
そろそろ寝ようかな。 そう思いながらトイレに立つと、旦那様が出てきました。
「一緒に寝ようよ。」 「う、うん。」
やっぱり来たか。 そう思ったんですけど旦那様は何もせずに寝てしまいました。
緊張しただけ無駄だったじゃないのよーーーー。 あれあれ?
寝ている旦那様はゴソゴソと何かを探しておいでの様子。 何だろう?と思ったら私だった。
あのねえ、私は枕じゃないの。 私はあなたの大事な大事な奥さんなのよ 分かってる?
このヘボ親父目!
 というわけで何も無いままに夜が明けました。 今日も一日頑張りましょうねえ!
気合を入れて旦那様を送り出し、掃除をしまあす。
たまの休みだもん。 家もきれいにしたいわよ。
まずは息子君の部屋ねえ。 うわーーー、ゴミだらけ。
メモリーまでほったらかしといて大丈夫なのかねえ? まあいいけど。
パソコンも埃をかぶっちゃって、、、きれいに使いなさいよね。 高かったんだからさ。
んでと、机も、、、うわー、汚いなあ。
何やかや気を使いながらの掃除なんです。 我が子とはいえ、成人男子なんですから。
椅子を退けてみるとあらあら、これは何? 私の下着じゃない。
まあ、見なかったことにしようか。 元の場所に置いておきましょう。
なんちゅう母親なんだか、、、。
 昼です。 今日は冷やしラーメンでも食べますか。
うん、美味しそう。 いっただきまあす。
食べ始めたら玄関が開きました。 「え?」
怪訝な目で私が見ていると、、、。 「帰ってきた。」と旦那様。
「いきなりどうしたのよ?」 「社長と喧嘩して帰ってきた。」
(これで終わったわ、、、。) 喧嘩する前に仕事しろよな てめえ!
 腹には立つけど顔には出さないで、取り敢えずいい奥さんを演じましょうかね。 「喧嘩って何をなさったの?」
「俺が辞めるって告げ口したやつが居たんだよ。 それで社長が怒鳴り込んできて、、、。」
あんたが誰彼構わずに辞めるって言いふらすからでしょうが、、、この能無し狸目!
「で、どうするの? これから。」 「さあねえ。 社長、知り合いとも仲がいいから。」
(じゃあ、次の仕事もほぼ絶望的じゃないよ。 何考えてるんだ こんちきしょうめ!)
 「でもさあ、なんとかなるよ。 捨てる神有れば拾う神有りって昔から言うだろう?」
あんたを拾ってくれるような神は居ないと思うけど、いつまで夢見てるのさ?
 旦那様は私が用意した冷やしラーメンを軽く平らげて自分の部屋へ、、、。
と思ったら昼寝しようと思っていた私の隣にやってきました。
「何か用?」 「うん。」
そう言って私にまとわりついてきます。 うっさいなあ、昼くらい離れてよ。
抵抗するのも空しく真昼間から冴えない旦那に愛されてしまう私なのでした。

 そして夕方になりまして、、、。 息子君が帰ってきました。
旦那様はやった後、シャワーを浴びて自分の部屋で死んだように寝ております。 何も無ければいいけど、、、。
 「母ちゃん、俺の部屋掃除したの?」 「あんまり汚いからさあ。」
「じゃあさあ、パンツ隠してたのも知ってるよね?」 「んんんんんん、知らないわ 知らない。」
「嘘だあ。 パンツが動いてるもん。」 (ギク、、、。)
息子君、そんなところまで見てたの? こりゃあ、やばいわ。
「ねえねえねえ、今日は何色?」 「そんなの親に聞くもんじゃないわよ。」
「じゃあさあ、こないだやったこと父ちゃんに話しちゃおうかなあ?」 「待て待て待て。 それをやられたら家族終わっちゃうわよ。」
「もう終わってるじゃない。」 「え?」
「父ちゃんさあ、若い子と会ってたよ。 こないだ、、、。」 「何処で?」
「大学傍の居酒屋でさ。」 「あんちきしょうめーーーー!」
「だからさあ、、、。」 そう言って息子君は私の後ろへ回ってきて、、、。
私を押し倒したかと思うと、何もかも忘れてしまう勢いで絡んだのでした。
 その夜は家族揃って葬式みたいになってます。
息子君は私と旦那様をジロジロと舐め回すような目で見ているし、娘ちゃんはだんまりを決め込んで何も話しません。
あーーーーー、どうしたらいいのよ? 公子さんでも連れてこようか?
でも、あんなん連れてきたら余計におかしくなるわよねえ。
でもさあ、この静かすぎる空気の中で私は一人ニヤニヤしていたのでした。
だって、息子君が思いっきり愛してくれてるからねえ。
 「父ちゃん、こないだ誰と会ってたの?」 息子君がいきなり切り出しました。
こらこら、いきなりやったら戦場になるだろうがよ、、、、。 「何のこと?」
「大学傍の居酒屋でさ、、、。」 「知らんなあ。」
「可愛い子と飲んでたよねえ? 誰だったの?」 「知らん。 余計なこと聞くな。」
ほらほら、居眠り狸が怒っちゃったじゃないよーーーーーー、どうするのよ?
「俺さあ、あの店でバイトしてるんだよ。 父ちゃんのテーブルにも酒を持っていったんだけどなあ。」 「知らん!」
あらまあ、案の定 狸が怒って出て行っちゃった。 「俺さあ、あの子を知ってるんだ。」
「何ですって?」 「地下アイドルのマーリンだよ。」
「地下アイドル? 何それ?」 「芸能界に入れなかった女の子たちが諦めきれなくて地下で活動してるってやつ。」
「モグラみたいね。」 「まあ、潜りの芸能人もどきだね。」
「そんなんとうちの旦那が何を?」 「さあねえ。 嵌められてなかったらいいけど、、、。」
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