私 ホームヘルパーです。
 次の日も朝から走り回ってます。 飯岡さんに吉原さん、丸井さんに川中さん。
みんな揃ってお掃除ママですわ。 昼には汗だくになっております。
 珍しくコンビニで弁当を買って事務所に戻ってきました。 「お帰りなさい。」
中では竜岡さんがタブレットを見ながら書き物をしてます。 澄江さんたちは出たままらしい。
 「どうですか? 仕事は。」 「公子さんが辞めてから一気に増えたから大変。」
「体は大丈夫?」 「子供の頃から元気だけが取り柄ですから。」
「それは良かった。 今度の土曜日、また飲みませんか?」 「いいですねえ。 でも竜岡さんが、、、。」
「大丈夫。 今度は運転代行が付いてる店にしましたから。」 「そうなんだ。 それなら飲めるわね。」
 弁当を掻き込みながら外を見る。 ガイドヘルパーの車が帰ってきた。
「よく食べるなあ。」 「これくらい食べないと体力が持ちませんよ。」
「それもそうだな。 あはは。」 「いやあ、疲れた疲れた。」
そこへガイドヘルパーの山元さんが帰ってきた。 「お帰り。 お茶でものむかい?」
「いただきまーーーーす。」 竜岡さんは笑いながらポットの湯を注いだ。
 ガイドヘルパーも大変よねえ。 車で行ったり歩いて行ったりするんだもん。
車で行く時には大きな荷物を抱えなきゃいけないことも有るし、通院だったらほぼ一日潰れることだって有る。 相手の都合に合わせて動くんだもん。
贅沢な我が儘は言えないわよねえ。 「あそこのコーヒーを飲みに行こうよ。」なんて。
 実はね、昼からはガイドが2件入ってるの。 一人は役所に行くんだって。
もう一人は買い物だって言ってたなあ。 ついでに私も買い物するか。
 「武井さんは昼からどうするの?」 「ガイドが2件入ってるからそれが終わったら帰りますよ。」
「2件か。 大変だなあ。」 「澄江さんたちよりはいいかも。」
「何だって? 私がどうかした?」 話していたらトイレから澄江さんが出てきた。
「いつの間に帰ったんですか?」 「やあねえ。 忍者みたいに言わないでよ。」
「ごめんごめん。 でも澄江さんって足音を忍ばせてくるから怖いんだよ。」 「あらそう。 これからは足音を立ててくるわね。」
「地震が起きそうだなあ。」 「何だって? 竜岡さん もう一回言ってみて。」
「うわうわうわ、大魔神が怒った。」 「あんたこそ大魔神でしょうがね。 このこのこの、、、。」
竜岡さんの首を突いている澄江さん、、、。 何とも言えない絵だなあ。
 「マグマ大使が怒ってる。」 「何ですって? マグマ大使?」
澄江さんは山元さんに向き直ると鋭い目つきで睨んできた。 「怖いなあ。 ママはこれだからなあ。」
「あんたがぼやくから悪いんでしょうが。」 「マグマ大使って確か夫婦ですよね?」
「え? そうだったっけ?」 「確か夫婦ですよ。 んで「人間みたいに子供を作りたい。」って訴えるんですよね。」
「子供か。 竜岡さんも子供欲しい?」 「そりゃあまあ、、、。」
「大丈夫よ。 武井さんならまだ産めるから。」 「まだ?」
私はお茶を飲みながら聞いてたんだけど思わず反応してしまった。 「武井さんはまだまだこれからだもんねえ。 頑張ってねえ。」
 私が聞いてきたものだから澄江さんは慌てたように出て行った。 「あれだもんなあ。 澄江さんは。」
「何か有ったんですか?」 「自分から振っておいて突っ込んで来たら仕事だからって逃げるんですよ。」
竜岡さんはタブレットを閉じると思い切り背伸びをして外へ出た。

 結局、家に帰ってきたのは6時過ぎ。 吉山郁子さんと買い物に行ったついでに我が家の買い物も済ませてきました。
百合子はというと英検の話をしに友達の家に行ってるみたい。 だから今の時間はだーーーーーれも居ませんです。
 誰も居ない台所でテレビも点けずに料理を作ってます。 今日はマーボー豆腐にしたわ。
ラー油とか豆板醤とか有る物を突っ込んでジージージャージャー炒めております。 うーーーん、美味しそう。
YouTubeで作り方を覚えて今日は三度目。 だいぶ慣れてきたなあ。
マーボー屋さんでもいいかもね。 ねえねえ竜岡さん。
 美味しそうな匂いが立ち込めてきた頃、信二と百合子が帰ってきた。 「腹減ったよーーーーー。」
「だから作ったでしょう? 座ってなさい。」 「はーーーーーい。」
「返事だけはいいのねえ。」 「返事だけはしとかないと損するからさあ。」
 テレビはいつものニュースタイム。 今日も冴えないニュースが並んでいる。
3人並んで夕食を掻き込んでます。 最近は絡まなくなったなあ。
信二にも百合子にも思う存分に奪われたのに、、、。 なんかあの頃が懐かしいわ。
 「ねえねえ今夜は3人で風呂に入ろうよ。」 「えーーーーーーー?」
「あんな狭い風呂に3人で入るの? 嫌だなあ。」 「とか言いながら本当は喜んでるんでしょう? お母さん?」
「そそそ、そんなことは無いわよ たぶん。」 「たぶん、、、ねえ?」
 そうは言うけれど結局はみんなで入ることになっちゃった。 何て家族なのよ?
信二に抱っこされたかと思ったら百合子を抱っこして、、、終いには信二に抱っこされて、、、。 ああもう、萌えちゃうわーーーー。
風呂から出る頃にはみんな揃って赤い顔をしてます。 やっちゃった。
 「もっと大きなお風呂にしようね。 みんな。」 「一番喜んでたのお母さんじゃない。」
「じゃじゃじゃじゃ、違うわよ。 何言ってんの?」 百合子に拳骨をお見舞いする。
「あらあら、図星なのねえ。 お母さんったら、、、。」 「もう、、、。」
 そんなわけで私は二人にやり込められてしまったのでありました。 助けてよーーーー、竜岡さん。

 そんな土曜日。 仕事も終えて夜も7時になりました。
「ちょっと出掛けてくるわね。」 「飲むんでしょう?」
(ギク、、、。) 「飲まれないように気を付けてね。」
 二人に見送られながら私は竜岡さんの車に乗りました。 「さあ行こう。」
アクセルを踏み込んだ竜岡さんは何かかっこいいなあ。 事務所じゃあその辺のおじさんみたいに見えるのに。
ときめいてるってことかしらねえ? ねえ竜岡さん。
 30分ほど走ってこの間とは違う店に入りましょう。 「この店はね、家族用の座敷が有るんですよ。」
「へえ、変わってる。」 「その座敷も古い形でね。 ほら床の間が有る。」
「ほんとだ。 掛け軸まで飾ってあるじゃない。」 「ここでたっぷり飲みましょう。」
 話している所に店員が小さな七輪を持ってやってきた。 「最後はこのお鍋で閉めになります。 マッチはここに有りますから。」
「へえ、七輪の鍋で閉めか。 いいなあ。」 「雰囲気良過ぎるよね。」
 煮物だの焼きものだの食べながら日本酒を飲んでおります。 気分いいなあ。
私がウットリしていると竜岡さんが近寄ってきた。 「武井さんってよく見ると可愛い人だったんだねえ。」
「止してよ。 可愛いなんて、、、。」 「あらあら、真っ赤になってる。 ほんとに可愛い人だね。」
そう言ったかと思ったら私は押し倒されちゃいました。 高山さん ごめんなさい。
って何を謝ってんだか、、、? 馬鹿みたい。
そんなわけで飲んだ勢いで抱かれてしまったわけですわ。 いよいよ竜岡さんの物になったのね 私?
 2時間ほど飲みながら過ごしてすっかり出来上がった私は竜岡さんの腕の中で幸せな夢を見てます。 うーーん、覚めたくない。
それでもやっぱり帰らなきゃいけなくて代行の車の中でくっ付いてます。 早く一緒になりたい。
なになに? 妖怪人間みたいだ?
早く人間になりたーーーーい‼ あのねえ、、、。
 帰ってくると百合子たちはもう夢の中。 私も夢を見ながら布団に潜り込むのでした。


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