ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 慣れない土地での撮影はきっと肉体的にも精神的にもハードだと思う。体調を崩さないでいてくれることが、一番の願いだ。


「ありがとう」

「ロサンゼルスって時差どれくらいなんですか?」

「16時間差だったかな?多分今向こうは夜だよ」

「16時間か……だいぶ差がありますね」


 なかなか連絡を取り合うのも難しそうだ。タイミングが合えばいいな。
 特に星來は夜遅くまで起きてられないし。


「毎日連絡する」

「嬉しいけど、無理しないでくださいね」

「多少無理してでも、話したいんだよ」

「私もです」


 やっぱり寂しくないな、と思った。もちろん会えないのは寂しいけど、遠いのは物理的な距離だけだ。心の距離は近くにある。

 朝食を食べ終えてホテルをチェックアウトし、ドレスを返却しに行く。
 これで日華さんとは1ヶ月会えなくなる。


「パパぁ……」


 星來は最後に泣いてしまった。そんな星來を大事そうに抱きしめる。


「パパはいつでも星來のこと大好きだよ」

「せいらも……」


 何度も抱きしめ合って、日華さんと別れた。帰りの電車の中で、星來はポロポロと涙をこぼしていた。
 そんな星來の頭を優しく撫でる。


 それから数日後のことだった。
 地平監督の最新作で陽生日華が主演となる映画の告知がされたのは。

 日華さんの言っていた勝負の意味を知るのは、まだ先のことだった。


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