ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 告げられたプロポーズの言葉に涙が溢れる。
 嬉しくて幸せで言葉にならなかった。


「返事は?」

「っ、はい……っ」

「泣かないで」


 日華さんは子どもをあやすように私の涙を拭ってくれる。


「すごくうれしい……」


 一度は諦めた夢だった。叶えられない、叶えてはいけない夢だと思っていた。
 けれど、私の夢が指輪という形になった。


「本当はロスに発つ前に渡したかったけど、なんか情けないかなと思って」
「情けない?どうしてですか?」
「だって俺がいない間の虫除けにしてるみたいでさ……余裕がなくてカッコ悪いかなって思ったんだよ。
でも、こんなに綺麗になっているならやっぱり発つ前に渡せばよかった」


 日華さんは私の頬を撫で、恍惚とした表情で見つめる。その瞳に吸い込まれそうなくらい、ドキドキした。


「あかり、どうしてそんなに綺麗になったの?俺の知らない間に」

「だって、少しでも自信持ちたかったから……」

「自信?」

「日華さんの隣に立つ自信……」

「あかりは十分綺麗で魅力的だよ。誰にも見せたくないって思うくらいには」

「日華さん……」

「好きだよ、あかり。愛してる」

「私も……」

「もう絶対に離さない」


 離れないし、離さないでください――。
 
 そんな想いを込めて私から口付けた。
 すぐに深くて甘いキスが降り注ぎ、何度もお互いの唾液を交換し合う。

 狭いゴンドラの中、二人の吐息だけが聞こえていた。


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